平成20年度は育児休業を取得し、本科研費に関する研究を1年間中断したため、本年度から再開した。本年度は、前年度の中断からキャッチアップすることを目的の一つとして、まず本研究の理論的側面について、安全保障面および規範面の主要な研究動向をレビューしたうえで、これらの研究を本科研費に関する研究にどのように適用することが可能なのかについて考察した。この成果は2本の学術論文として公表することができた(下記11.の[雑誌論文]第2件目および[図書]の第1件目を参照)。これをもって、本研究で用いる主要な理論的枠組に関しては、大方完成させることができた。また、研究中断中の平成20年度中にロシア・グルジア紛争が勃発したが、これがEUの対外関係全般およびトルコのEU加盟問題にどのような影響を与えたのかを検証した。これは論文と学会報告のかたちで公表することができた(下記11.の[雑誌論文]第1件目および[学会報告]を参照)。最後に、2007年以降のEU拡大プロセスの全般的な動きの中で、トルコの加盟問題をどのように位置づけることができるのかという、本研究の中核に関わる部分に関する成果を、共著の1章として公表することができた(下記11.の[図書]の第2件目を参照)。ロシア・グルジア紛争という、本研究開始時には予想もしなかった事態は生じたものの、これを本研究の大きな問題意識の中に取り込んで考察するという作業を行うにあたり、一定の成果を上げることは出来たと考えている。
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