本応募研究では、トルコの加盟問題をめぐるEU内部(加盟国政府およびEU諸機構の政治指導者)のディスコースと認識の変遷およびEU内部での政策決定過程(欧州委員会による対トルコ戦略形成過程、理事会などの場における意思決定過程)を分析し、本年はその最終年度となった。 本年度は、これまでの3年間に蓄積してきた方法論と資料を踏まえ、いったんEU拡大の全体像とそこにおけるトルコ加盟問題の位置づけを整理した(本報告書下記13.の「著書」の欄を参照)。そのうえで、とりわけEU内部のディスコースがどのように分類され、それらがどのように発展してきたのかを体系的にまとめた。とくに今年度に関しては、トルコに対するEUの「自己同一化/他者化」の揺らぎ、トルコのEU加盟推進/抑制のロジックの整理とその変遷、「西側としてのトルコ」ディスコースの推進アクターとしての米国の存在、などに重点を置いて研究を実施した(下記13.の「学会報告」の欄の1点目を参照)。 また、9月にベルギーのブリュッセルに出張し、欧州委員会における対トルコ政策担当者、およびEU・トルコ関係に関して目覚ましい研究実績を持つシンクタンクにおける研究者らに対し、集中的にインタビューを実施することができた。 さらに、(当面はEU拡大の対象外となっているものの、EUへの加盟希望が随時表明されてきた)ウクライナをはじめとした欧州近隣諸国政策およびイースタン・パートナーシップ政策の対象諸国との関係などについても、それがトルコのEU加盟問題に直接・間接にもたらす影響について考察した(下記13.の「論文」および「学会報告」の2点目を参照)。これらの研究成果は、あくまでもトルコのEU拡大プロセスに影響を与えうる諸要素の側面的検討を行ったものであり、欧州近隣諸国政策およびイースタン・パートナーシップ政策を主眼とした研究ではない。
|