本研究では、世界銀行(以下世銀)のアカウンタビリティーについて、インスペクション・パネル対象となったプロジェクトを通じて明らかにすることを主要な目的としている。そのために、(1)インスペクション・パネルの世銀組織への効果・影響を、文献調査とヒアリング等によって明らかにする。(2)必要に応じて、開発途上国におけるパネル事例を実地調査することを目的としている。 これら目的の達成ため、筆者は、昨年4月から8月にかけて、各種データベースおよび書誌情報をもとに文献調査を行い、あわせてそれらの収集を進めた。6月には、国立国会図書館で、世界銀行のインスペクション・パネル対象となったプロジェクト-バングラデシュ、インド、レソト、ブラジル等について、博士論文、学術論文、雑誌記事、英字紙、現地報道等を調査・収集した。その結果を踏まえ、ブラジルで1970年代末から80年代に実施された世銀のポロノロエステ・プロジェクトと、1990年代に実施されたプラナフローロ・プロジェクトについて、現地調査を行うことを決めた。7月にはブラジルを研究対象とする文化人類学者にインタビューを行い、8月に調査対象地の絞り込みを行い、9月に約2週間の日程でブラジルのロンドニア州を中心に現地調査を行った。同州では、日本からの研究者がこれまでほとんど訪れたことが無い所で、文献調査と実調査を行うことができた。 同国では、ブラジルのロンドニア州の世銀融資によって建設された道路による、熱帯林破壊状況とその後の生態系回復計の一端を知るとができた。また7名近い関係者(プロジェクト関係者、非非府組織[NGO]スタッフ、大学教授ら)に聞き取り調査を行うことができた。その結果、ブラジルにおける世銀プロジェクトの社会と環境への影響、そしてそれに対するNGOの対応と市民社会のあり方、インスペクション・パネルの調査等について知ることができた。
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