研究概要 |
本研究では,組織の構造の効率性について契約を通じて分析する.ここでは特に,経営の意思決定に欠かせない情報の収集・伝達時における効率性を分析する.問題は,情報の収集・伝達を任されたエージェントが,プリンシパルの望むような行動をとってくれないことがあるということである.望ましい行動をとらせるには,エージェンシー費用が発生してしまい,組織はこれを最小にするように設計されるべきはずである.それでは,この費用はエージェントの選好とどのような関係があるのであろうか.両者の間での契約を考え,その契約によって発生する費用をエージェンシー費用として考え,分析をする. 既存の研究では,情報の伝達時の費用,あるいは情報の収集時の費用どちらかのみに焦点を当てて分析を行ってきた.これらの研究では,エージェントとプリンシパルの選好の差が大きいほど,費用が単調に増大すると結論付けてきた.選好の差を小さくするには,プリンシパルとエージェントが,同一組織内に居ることが考えられる.しかし,現実には,アウトソーシング,分権化,分社化といった現象が見受けられ,既存の理論によっては説明することが困難であった.本研究では,情報の収集・伝達を同時に考えるときには,エージェンシー費用は,選好の差の減少関数である場合があることを示し,ある程度の選好の差が,費用を最小にすると結論付けている.これにより,上記のような現実の組織について説明をすることができるようになるのである.
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