研究概要 |
本年度は理論研究を中心とした成果を上げることができた. 具体的には, 海外の査読つき学術誌に1本刊行, 和書を一冊出版した. 論文では, 組織における, インセンティブ理論において, 新しい発見をした. これは, 今までは, 組織にとって費用としか見做されていなかった, 利己的な利益が, 組織の情報収集・伝達の費用を削減することを示した. これにより, 今までは説明されなかった, 分社化といった, 多様な組織形態を, 費用に注目してきたこれまでの分析の枠組みでも捉えることができる可能性が出てきた. すでに, 数本の海外の論文に引用されており, 論文のユニークさを示しているといえる. この論文以外にも, ワーキングペーパとして, 組織における情報伝達に関する論文を公表. この論文の結論は, タテ型の階層的組織のほうが情報伝達がスムースに行くという結論を導き出した. これまでの痛切では, タテ型組織は, 情報を伝達する回数が多くなるので, 正確な情報が伝えられにくいとされてきた. しかし, これと全く逆の結論を導くことができ, 理論の現実社会への応用に道を開くことができた. 和書では, 理論分析の元となる, 契約理論を法と軽済学に応用した理論について考察した. 法と経済学を考えることは, 組織が実社会の中で存在する限りは, 分析するにあたって避けては通れない. 本書によって, 組織と法体系との係わり合いを理解する手助けとなった. また, 日本では法と経済学の理論いついて述べた書物は数少ないものの, これから注目される分野でもあり, この時期に出版されたことは重要である.
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