研究概要 |
本研究では,組織の構造の効率性について契約を通じて分析を行った.情報の非対称性,選好の違いにより,最善の経済的効率を達成することは不可能である.それならば,次善の結果をいかに生み出すことができるであろうか.本年度の研究では,特に情報の伝達に注目して研究を行った.その結果明らかになったことは,複数のエージェントから異なる情報を引き出そうとする場合,より正確な情報を引き出すには,エージェントの好みが近いほうが望ましいことが判った.この結果は,複数エージェントが同一の情報を保持しているときには,好みが対称なエージェントから情報を得たほうが,互いに牽制しあうので,より正確な情報が得られるという結果と対照的である.エージェントが情報を操作し,プリンシパルが情報を修正のうえ活用する場合を想定しているのだが,ここで,プリンシパルが一定の確率で,エージェントからの情報を鵜呑みにするとしよう.すると,この一定の確率で,エージェント間の選好が反対であった場合,彼らの間での情報の操作が激しくなっていう,しかし,選考が似たようであるならば,逆となる.また,この研究では,新しいモデルの導入により,これまでは困難であった,3つ(以上)の選好の異なるプレイヤー間の情報伝達について分析を可能にしたところが新しい.本研究により,企業の合併,スピンオフによる効率性の変化が,どうして様々であるのかに対して説明をすることができる.
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