平成21年度は、平成20年度の研究結果を踏まえて、DSGEモデルの数値解析手法の研究をさらに進めた。特に、DSGEモデルの定常均衡計算方法に関する研究を行い、その定常均衡計算方法のアルゴリズムの数学的基礎を分析し、それに基づくコンピュータ・ソフトウェアを開発した。 研究実施計画に書いた通り、定常均衡計算のアルゴリズムに関して、近年Glynn and Henderson (2001)が条件付モンテカルロ法とRao-Blackwell化の考えに基づいた強力な新手法を提案した。この手法は高次元確率過程の定常均衡の計算に有用な手法であり、平成21年度の研究ではこの手法の理論をさらに研究し、DSGEモデルに適用した。 条件付モンテカルロ法に基づく均衡計算のアルゴリズムのパフォーマンスと誤差の大きさはV-一様エルゴード性と深い関係があるため、V-一様エルゴード性の研究を同時に行った。西村和雄(京都大学教授)との共同研究で、commodity pricing modelのV-一様エルゴード性を分析し、マルコフ過程の理論におけるドリフト不等式を利用して、V-一様エルゴード性を証明した。この研究の成果はInternational Journal of Economic Theoryで出版された。今後、この考え方をより複雑で大規模なモデルに拡張する予定である。
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