(1) グループ間の移動と外部性の効果検討のための実験設計と実験の実施 ラボ実験で行うゲームを設計し被験者を使った経済実験を実施した。実験の設計は、2グループ、8人のプレイヤーを想定した繰り返し3ステージゲームに汚染スピルオーバー(グループ外部性)やプレイヤーの移動といったグループ間のインタラクション要素を加えた。ラウンド数は最終ラウンド効果を回避するために8ラウンド以降、ランダムに修了するよう設定した。利得関数は排出ゲームに基づいた線形に設定し、一つの利得表にまとめ被験者にゲームの構造を理解しやすいよう工夫を行った。また、グループ間の移動や罰則を与える行動をとらせるインセンティブを十分に保つために授業などで模擬実験を昨年度に続けて行った。実験はグループの移動がある場合とない場合の計3セッション行い、大阪大学構内の教室で実施した。各セッションともにラウンドがすすむに従って非協力的な行動(高い排出を選択する)に落ち着くという結果が得られたが、グループの移動が明らかに協力的な行動を選択している被験者にネガティブな影響を与えていることが見て取れた。また、協力的な選択の割合は移動があるセッションのほうが高く、グループ外部性と移動の選択の存在が協力的行動を崩しているということが検証された。 (2) 学習モデルの開発とパラメタ推計 各セッションとも「非協力的な行動」という均衡(結果)に収束したが、その経緯は明らかに異なっている。従って、そこにいたるまでにどのような情報を使って学習を行っているかについての理論モデルを本実験モデルに応用した。本研究で扱っている実験(ステージゲーム)にあわせ、利得行列を修正しまた各グループごとにパラメタの初期値を設定するなど、新たな学習モデルを開発した。
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