現代はまさにコラボレーション(協働)の時代である。現代の経済環境では他者と上手く協調的関係を構築することで、両者が生み出す成果の価値を高めたり、ブランドイメージを向上させたりすることが重要になってきている。他方、経済学の研究では従来から、協働作業では、ある個人の労働投入は、当該個人の便益になるのみならず、他者にとっても便益をもたらすため、「ただ乗り」が起こり、パフォーマンスが低下する事が過去の研究成果として知られている。 その解決策の一つとして、成員が長期的関係にコミットするという方策が挙げられる。そこで、本研究では、協働のネットワークのあり方と長期的関係における協調行動出現との関係性を次のように3つの観点から分析し、それぞれについて成果を得た。 1. 研究協力者の和歌山大学太田勝憲氏との共同研究により、従来離散時間で扱われていた長期の協働に対する関係多様化問題を、連続時間の枠組みで捉え直すことで、協働における関係多様化の効果は正の割引因子であれば大きさによらず存在することが分かった。この成果を査読付き英文雑誌Economics Lettersに投稿し、採択され、掲載された。 2. 研究協力者の京都大学の関口格氏と和歌山大学太田勝憲氏との共同研究により、長期の協働における最適賃金配分の特徴付けに成功した。この結果をEconometric SocietyのEuropean Meetingに投稿し、採択され、報告した。また、現地にて欧州の研究者と当該課題について議論をした。 3. 研究協力者の神戸大学末廣英生氏との共同研究により、協働におけるリーダーシップの出現についての十分条件を見いだした。この成果をGame Theory SocietyのWorld CongressとEconometric SocietyのEuropean Meetingに投稿し、採択され、報告した。
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