今年度実施したのは、1)プレイの終了時点が確率的に変化する場合の多市場接触に関する経済実験の実施、2)囚人のジレンマ型以外のゲームを含む多市場接触における経済実験の実施である。 1) については広島市立大学でデータを収集した。しかし、被験者が十分集まらなかったこともあり、当初の予定通りのデータが収集できたわけではない。そのため、詳細な分析が出来ていない。研究補助は終了するが、未収集のデータを次年度早々に収集し、分析が出来る状況に進めたい。現在のところ、ゲームの平均継続回数が増加すると協力率は高まる一方、プレイするゲームの数を増加させると、協力率が減少するごとが簡単な分析から明らかになっている。 2) については京都産業大学でデータを収集した。具体的には、繰り返しゲームの状況で2人のプレイヤが囚人のジレンマと調整ゲームを同時にプレイする時の囚人のジレンマの協力率と囚人のジレンマのみをプレイする時の囚人のジレンマの協力率を比較し、調整ゲームの存在が囚人のジレンマの協力率にどのような影響を与えるか分析した。理論的には、調整ゲームを加えたとしても囚人のジレンマの協力率には全く影響しない。しかし、分析の結果、調整ゲームの存在は囚人のジレンマの協力率を高めるものではないどころか、プレイの初期には協力率を低めることが明らかになった。複数のゲームをプレイすることでプレイヤの意思決定にかかる費用(心理的費用)が高くなり、囚人のジレンマにおいて最適反応を取る可能性が高くなってしまったのである。 研究成果は以下の学会で報告された。11月にローマ第3大学で開催されたEAEPEにおいて、昨年度までの研究成果である、「長期間多市場接触が継続する場合」の経済実験の分析結果について報告した。また、12月に台湾桃園市で開催されたWEHIAにおいて、2)を報告した。
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