本研究が対象とする問題は、少子高齢化を迎え労働力維持のために外国人労働者を受け入れるか否かの検討を火急に迫られているわが国だけではなく、グローバル化が進み労働が国境を越えて自由に移動する時代となったEU、また、海外からの送金が経済発展に欠かせなくなっている途上国という様々な観点から論じることのできる課題である。この中で、本年度は、「わが国が外国人労働者(本年度は、永住ではなく一時期だけ受入国で働くゲストワーカーを考える)を受け入れた場合、経済成長率にどのような影響を与えるか」という問題を、人的資本成長を組み込んだ世代重複モデルを構築することによって検討した。本研究は、外国人労働者を自国労働者の単に代替的な労働とみなすのではなく、補完的労働者とも捉え、さらに労働移動に伴う資本移動を明示的に考慮に入れることで、国際的労働移動が存在する場合の内生的成長モデルを構築する試みである。本稿の分析によれば、生産において、外国人労働者と自国民との間が補完的な役割よりも代替的な役割を果たすときに、受入国の経済成長率が高くなることが示された。これは、外国人労働者を受け入れたことによる生産関数の変化が、利子率を変化させることを通じて、異時点間の代替効果や所得効果の変化をもたらすためである。これらの成果は論文にまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。また、今後の課題として、さらに送り出し国に対する影響や公共財の影響なども考えて行く予定である。
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