研究概要 |
平成20年度は、本研究(国際的視点からのピグー研究)の第2年目にあたり、そこでの成果は、およそ以下の4点に整理される。 第1に、2008年度の経済学史学会研究奨励賞(受賞作:本郷亮『ピグーの思想と経済学-ケンブリッジの知的展開のなかで-』名古屋大学出版会, 2007)を受賞したことである(経済学史学会『経済学史研究』第50-1号, 2008年7月 : 96-97頁に「学会賞審査委員会講評」掲載)。 第2に、ピグーのケンブリッジ大学経済学教授就任100周年を記念して、その教授就任講演『実践との関わりにおける経済学』(1908年)の邦訳および解説を行った。これはピグー厚生経済学の始期の形成過程を研究する上での重要文献の1つである。この作業を通じて、自由貿易論を含む初期ピグーのさまざま要素が、その後の厚生経済学に結実してゆく過程が一層明らかになった。 第3に、(初期ピグーのさまざまな要素のうち)上記の貿易論と並んで重要な位置を占める慈善論の研究を行い、その意義を明らかにした。最初期のピグーがソーシャル・ワークについての詳しい議論を行っていることは、非常に意外であり、彼の厚生経済学の理解を少なからず左右するインパクトをもつでろう。この成果は、2009年度の経済学史会全国大会で報告される。 第4に、ピグーの「政治」世界に関する認識の特徴が明らかになった。すなわち彼は経済政策を立案・実行する政治家や官僚の能力に対して懐疑的であり、このことが彼の経済政策論を慎重なものにした。
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