前年度に構築した推量法の改良を試みると共に、有用性を検証することを目指した。具体的には、 1. 我々の推量法に用いる直行条件からは、示唆される誤差項の系列無相関性が示唆される。そこで、その無目性を2GMM(generalized method of moments)の最適ウェイト行列を求める際に明示的に課すことで小標本特性の改善が図れないか検討した。無相関性を課すと最適ウェイト行列の非対角要素をより正確に推定できると考えられるため、既存の多くのGMM推定量(無相関性を課さずに1段階GMMからの推定残差の単なる積和で最適ウェイト行列を計算する)より小標本特性が良くなると思われる 2. 小標本特性を改善するための他の方法(bootstrap法等)より、この研究課題での推量法の方がより良く機能するかどうかを確かめる 3. モデルにいわゆる時間効果が入っても我々の推量法が適切に機能するか調べる 4. ラグ変数以外の説明変数が入ったときのパフォーマンスを調べる。その際、説明変数の性質(例えば、強外生か弱外生か等)にパフォーマンスが依存するか、依存するとしたらどのように依存するのかに注意する 5. ダイナミックパネルモデルの推量は、しばしば初期値の性質に影響を受けることが知られている。そこで、我々の推量法が初期値(特に非定常な初期値)に関してどの程度頑健かを検証するといったことを目指した。ただ、これらのことを行うにはコンピューターでのかなりの数値計算を必要とするため、上記の5つ全てが完了してはいない。引き続きこれらのことを検証し、推量法を確立させていきたい。
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