研究概要 |
平成20年度は、平成19年度に得られた知見を基に研究発表を主に行った。景気の計量分析において重要であると考えられる、マルコフ切換モデルを証券市場の株価指数データに応用し、株式市場における循環的変動の分析をしたものが、「株式市場におけるブル相場・ベア相場の日次データを用いた分析-ベイジアンアプローチ-」および「Estimation of asymmetry in bull and bear markets」である。前者は、マルコフ切換GARCHモデルを用いて分析を行い、推定においてはマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた新しい推定方法を示した。この研究は論文としてまとめられ、JAFEE(日本金融・証券計量・工学学会)が出版している和書の査読付ジャーナルに掲載された。後者は、上記のマルコフ切換GARCHモデルによる分析を発展させ、マルコフ切換GJRモデルを用いて分析を行った。GJRモデルはGARCHモデルに株価が下がった次の日はボラティリティーがより高くなるという現象(非対称性)をモデルに陽表的に取り入れたものであり、GARCHモデルよりも実際の株式市場の特徴をよくとらえるモデルであることが知られている。この研究は、ISBA 2008 : 9th ISBA World Meetingで発表を行った。また、「パレート分布を用いた経済格差の検定」では、景気を考える上で重要であると考えられる所得の不平等問題を取り上げた。この研究では、パラメトリックにジニ係数を定式化し、その漸近分布、および、格差が広がったかどうかの仮説検定を行う検定統計量を導出しさらに実証研究を行った。この研究は論文にまとめられ、日本統計学会誌に掲載された。また、「Electric demand forecasting by spatial autoregressive seasonal ARMA (p, q) model」では、電力会社別の電力需要データを用いて、空間計量経済学的な定式化により、どれだけ予測が正確になるかについて研究を行った。この研究は将来的に県別の景気指標を分析する上で重要な、地域間のつながりの定式化を取り上げているものである。この研究は、2nd International Workshop on Computational and Financial Econometricsおよび2008年度統計関連学会連合大会において発表を行った。
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