研究概要 |
生産関数を正しく特定化し、生産性を計測することは実証経済学の大きなトピックの一つである。近年わが国では、非製造業がGDP全体の70%を占め、中でもサービス業はGDPシェアの20%を超え、製造業のシェアを上回り、わが国の経済を牽引する重要な産業となっている。しかしこれまでの経済理論が製造業を念頭においているため、製造業の生産関数を利用した非製造業の生産性計測が大多数である。これに鑑み、本研究は非製造業の中でも特にサービス業の生産技術の構造を調べるために、生産関数に代わる新たな関数を構築し、推定し、サービス産業の技術構造を明らかにすることを目的とする。本年度は、サービス業の生産性の計測と需要サイドの分析を行った。Ichimula, Nishiyama and Konishi(2008)で開発した推定量を用いて、サービス産業の生産性を計測し、学会・研究会での報告を行った。それにより、誰にも観測できないショックと、企業固有の生産性ショックを識別することに成功した。さらに、美容院の需要データ(顧客データ)に加えて、供給側のデータを使用し、美容院の生産性計測に取り組んでいる。昨年度に引き続き顧客の価格やサービス、立地に関する反応の異質性と、顧客になっていく過程の実証分析を行うために、商品価格に割引を与えて需要行動がどのように変化するかを観察した。またそれに関する実証分析を行った。これにより、顧客の価格弾力性と、需要反応の異質性の存在が明らかになった。
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