研究概要 |
今年度には19年度~21年度の研究の成果を引き続き国内外の学会やワークショップ等で発表し、他の研究者と議論を行った。研究においては、特に空間計量経済学の手法論の開発に焦点を当てた。具体的には次の通りである。 (1)複数の空間項の導入:従来の研究では単一の空間構造についての相互依存関係しか確認できなかったが、今年度の研究では複数の空間構造へ拡張した場合の尤度関数の導出や推定するプログラムの開発を引き続き行った。追加の空間項についてのLagrange Multiplier検定などが今後の課題かと思われる。 (2)分散不均一性の考慮:従来は攪乱項の分散不均一性が疑われる場合には、利用可能なモデルが限定されていたが、今年の研究によって一般的なモデルも推定可能になった。実際の実証研究に適用した場合には、尤度関数の最適化に失敗するなど、推定ができない場合もあるが、その点は今後の課題としたい。 (3)(1),(2)を組み合わせることにより、同時方程式体系についての空間計量経済学モデルを推定可能となる。計量経済学において問題になることが多い点は、説明変数に内生性がある場合に、推定値にバイアスが生じることである。同時方程式として定式化することでこの問題点を回避しうる。特に、関東地方の都市アメニティ評価を事例として研究発表を行った。空間項の係数の数が増えることにより、尤度関数の最適化の速度が非常に遅くなるが、速度の改善を今後の課題としたい。
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