本研究は、R&Dネットワークにおける戦略的提携に注目し、企業の連鎖的な研究開発提携行動に関して実証分析を行うものである。本年度は、研究の最終年度にあたり、これまで得られた成果のとりまとめをおこなった。(1)まず、前々年度の研究から明らかにされた「アメリカのIT産業のR&DネットワークではR&D形成の際にclosure preferenceおよびPreferential attachmentとう選好がみられる」という実証分析結果を英文でとりまとめ、研究開発とイノベーションを取り扱う国際学会誌に投稿した。査読の結果、分析に使用した特許データベースの精緻化と、分析の頑強性が要請されたため、Trajetenberg et alが開発したCMP方に依拠して特許データの再構築を行い、再度の実証分析をおこなっている。その結果、投稿論文は受諾された。(2)つぎに、前年度の分析結果から明らかになった発見である「共著ネットワークを使用して転職した発明家の生産性は、公募ネットワークを使用して転職した発明家に比べて高くなる」という分析結果を理論的観点から再検討するとともに、実証分析結果とりまとめ、労働経済学の国際学会誌に投稿した。査読プロセスにおいて査読者から企業に関連する観察されない要因の影響を考慮する必要があるとの指摘があったため、企業固定効果を取り入れて再度実証分析を行い、その指摘に答えた。その結果、最終的にこの論文も受諾が決定した。
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