平成19年度では、ロボティクス分野とナノ材料分野において、データベースの構築と知識の移転と組織能力の関係について分析を行った。その結果、技術が持つ個別性とともに技術オポチュニティや制度的側面が強い影響を与えていることが判明した。そこで本年度は、平成19年度で対象とした領域と一定の距離を持つ別の技術領域を選択し、その分野において平成19年度に実施したことと同様の解析を実施した。その結果得られた解析結果を平成19年度に実施した解析結果と比較することで、分野固有の状況による影響を排除することを試みた。最終的には、平成五9年度と平成20年度以降の成果を総合し、産学連携を成功させるための指針を提案した。 分析の結果、産学連携の成否はいわゆる"Pasteur's Quadrant"と呼ばれるような、「実務知識」と「研究知識」によって研究者の種別の分類によって大きく異なることが判明した。一般的には、企業が知財化を見込んで大学研究者から知識獲得を試みる場合、特許本数の多い研究者を選ぶことが合理的だと考えがちであるが、実際には特許出願に見られるような実務的スキルだけでなく、論文出版数などといった学術業績の側面でも優れた研究者と連携することが重要であることが判明した。 これらの研究の結果得られたデータについては、個人情報に関する事項を捨象した後に一般公開を行うことを前提として整理を継続している。また、研究実施過程においても、ウェブを利用し積極的に情報発信を行った。この結果はhttp://www.iii.u-tokyo.ac.jp/^shichiにみることができる。
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