垂直結合が外部性を取り除き、効率性を向上させるとする競争促進論は垂直結合が消費者価格の引き下げ、生産量の上昇、そして消費者余剰の上昇を予測するのに対し、競争阻害論は消費者価格の引き上げ、生産量の下落、そして消費者余剩の下落を予測している。これらの相反する理論は共存可能であるため、二つのどちらの影響が大きいかを検証するには実証分析が必要となってくる。本年度は以上の問題意識のもと、垂直結合が盛んな米国のケーブルテレビ産業におげる垂直結合の市場への影響を実証分析することに集中した。 本年度の成果としては、まずデータベース構築があげられる。これは、必要なデータの掲載されている年鑑をインプットすることから始まった。構築されたデータべースを使い、Turner BroadcastingとTime Warnerという縦型関係にある2社の垂直結合の市場への影響を実証研究した。その結果、この垂直結合から効率性は向上したが、その利益は消費者には渡っていないとがわかった。その主な理由としては、結合した川下企業が結合相手である川上企業のインプットを使おうとすることにあった。 垂直結合が効率性向上をもたらすが、その利益が企業側でストップしてしまうという本研究の結果は、本研究の対象の垂直結合のみならず、どの垂直結合でも懸念すべき問題である。よって、今回の結果は今後の企業結合審査の基準を考えるにあたって重要であると思われる。
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