研究目的 垂直結合が外部性を取り除き効率性を向上させるとする競争促進論は、垂直結合による消費者価格の引き下げ、生産量の上昇、そして消費者余剰の上昇を予測するのに対し、垂直結合が競争者費用の引き上げを念頭に置いた垂直的市場閉鎖の契機となりえるとする競争阻害論は消費者価格の引き上げ、生産量の下落、そして消費者余剰の下落を予測している。これらの相反する理論は共存可能であるため、二つのどちらの影響が大きいかを検証するには実証分析が必要となってくる。本プロジェクトは実証研究によりこの問題に取り組むものである。 研究方法 2009年度は電力小売産業の省庁や地方公共団体の電力購入入札データを使用し、垂直結合している一般電力会社と分離しているその他の電力供給会社において、どちらのコストが高いかを推計した。推計方法としては、近年急速に発展してきたノンパラメトリック手法の推計方法を用い、関数型の仮定に頼り過ぎない分析を目指した。 研究成果 電力契約に対する平均コストの推計と、そのコストをつかったシミュレーションにより、現在まで下記のような興味深い結果が出ている。 1.垂直結合している一般電力会社のほうが低いコスト構造を持っている。2.低いコスト構造をもつ一般電力会社の応札は分離している他の電力供給会社に比べ消極的なものとなっている。3.入札額の評価を差別化するなどのPrice Preference Policyにより、一般電力会社の応札行動をより積極的にし、入札実施機関の歳入を増やすことができる可能性が高い。
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