近年における環境経済学の研究の流れのひとつとして政策の信憑性に焦点を当てた研究が増えている。そして、自主的アプローチとよばれる政策手法が多くの国で活用されている。日本でも経団連が自主的行動計画を1996年に発表し、温暖化対策と廃棄物対策に関する数値目標を策定し、実施している。日本の経団連は政府が政策変数をコミヅトす以前に環境投資を行ったことになり、この種の行動はunilateral initiativesと呼ばれている。 Poyago-Tlieotoky(2007)[JEBO]は経団連のような自主的取り組みをク-ルノー型の複占市場の中でモデル化し、環境投資を非協力的に行うべきか、それとも共同研究開発のもとで協力的な環境投資を行うべきかを分析している。しかしながら一般化の余地が残っている。そこで本年度の理論分析の基礎として、Poyago-Theotokyモデルに基づき、企業行動を(1)非協力投資(2)カルテル投資(3)共同研究競争(4)共同研究開発カルテルの4つの投資形態に拡張して分析を深化させた。主要な結論として、次のことが得られた。企業にとっては、共同研究開発カルテルがもっとも高い利潤をもたらす。また、社会厚生については、企業数が減少するかあるいは投資費用の効率性が高くなるにつれて共同研究開発カルテルが社会的に望ましくなる。 さらに、理論分析と平行して廃棄物の処理施設などへのフィールドワークも行い、低公害型社会の実現へむけての課題整理も行っている。
|