研究概要 |
今年度は,以下の2つのテーマについて研究を行った。まず,1点目は2008年度より継続して行っている家計のごみの分別行動と企業の環境配慮型製品のデザインについての経済モデル分析である。家計による適正なごみの分別はリサイクルを促進し,資源循環型社会を構築する上で重要であるが,ごみの分別行動は家計に対し不効用をもたらす可能性がある。本研究では,ごみの分別の複雑化が家計の行動そして社会厚生にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした。特に今年度は,行政のごみ処理料金率変更(上昇)のタイミングが家計のごみの削減努力および分別努力,そして企業の環境デザイン投資水準に及ぼす影響を理論的に分析した。この研究の結果は,資源循環型社会を実現するためのごみ問題に対する行政の政策のあり方に対しひとつの方向性を示したものといえる。 2点目は今ごみ問題が先進国以上に深刻になっている途上国における廃棄物行政および先進国の支援のあり方についての研究である。インフォーマルセクターによるリサイクル行動をハリス=トダロ・モデルに導入することにより,途上国の失業問題および廃棄物処理問題を解決するための政策手段について考察を行った。本研究により,インフォーマルセクターへの支援は失業者数を増大させ社会厚生を悪化させるのに対し,フォーマルなリサイクル部門を成長させるような政策は失業者数を減少させ社会厚生を改善することを示した。この分析結果は,先進国の途上国への効率的で有効な支援のあり方について政策的インプリケーションを与えるものである。
|