研究概要 |
生活保護受給行動は、基本的に当該本人の稼得能力と密接に関りがある。就業によって生活費を賄うことができれば福祉に頼る必要がないからである。就業による収入で生計を立てる条件として,第1に就業先をみつけること,第2に収入水準が生活するに足りること、がある。特に専業主婦の場合,就業におけるブランクがあり就職先を見つけにくいだけでなく,運良く就業先を見つけたとしても賃金水準やその後の賃金上昇において不利である可能性が高い。そこで,本年度は,若者の賃金プロファイルが入職年齢において異なっているという仮設を検定し,労働市場における中途採用の特徴を明らかにすることで,人々の転職・再就職行動と賃金水準・賃金変化の関係を調べることを目的とした。若年期のキャリア形成ならびにその後への影響を分析することは,現在の若年労働市場が将来の労働市場へ与える影響を予測するためには不可欠だからである。研究の結果,賃金水準および賃金上昇率は入職年齢によって異なることがわかった。特に,5年前の人数と比べて何%の人が同じ職場に残っているかを示す残存率と5年前と比べた賃金上昇率との間には負の相関があり,皆が仕事を辞めない(すなわち,残存率が高い)グループほど賃金上昇率が低く,仕事をやめる人が多い職場で仕事を続けている人ほど賃金上昇率が高い傾向が明らかになった。仕事を辞める人が多い職場で就業を継続している人は賃金水準率が高い,と解釈するよりは,能力あるいは賃金が低い人ほど仕事を辞め,賃金の高い人ほど職場に残る傾向があるために平均賃金が大きく上昇したと考える方が自然であろう。また,入職年齢が高い人ほど賃金上昇率が低くなることから,入職年齢が高くなると2次的な仕事に回るという可能性もあるが,さらに詳しく調べるためには学歴構成等でコントロールする必要がある。
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