平成21年度の成果 (1) 具体的内容 学会発表では、サービス業と製造業とで日本企業の海外展開の動機がどのように異なるのか、そして海外展開後の生産性がどのように異なるのかを発表した。(学会発表後改訂した論文は修正依頼をうけ再投稿中である。)米国での調査では、米国の企業データの収集を行い、また在米研究者との意見交換を通じて、日本の海外展開活動との比較を行った。また、この研究の過程で、日本のサービス業の低調な海外展開1や、内需志向に依存している特徴を強く認識し、サービス業の活性化のあり方、政策的な取り組みの是非についても論文にまとめた。さらにサービス産業に対する政策的規制の是非を論ずる際に、医療サービスを考察の中心とすることで、問題をより具体的に扱うこととした。川渕孝一氏(東京医科歯科大学)津下一代氏(あいち健康プラザ)との共同研究を論文にまとめた。 (2) 意義・重要性 企業行動の動機とその結果を比較する際に、ある時点で最も類似した特徴(設立年・産業・規模・子会社数)をもつ2社を事前と事後で比較するという手法(Propensity Score Matching)を用いた。これはある事象のインパクトを、なるべくそれ自身の影響のみを抽出して評価する方法として注目されている。ただし、そもそもサービス業において、その生産性をどのように定義し、計測してゆくか、という点については、評価手法が統一的でなく、産業ごとの特性の違いがあるため、今後も検討を要する。医療サービスの生産性や成果評価については、トヨタ健保組合員(約20万人)の健診履歴、受診履歴のデータを活用している。これは医療分野においても非常に貴重なデータである。生活習慣病特定健診・特定保健指導に対する政策評価を論文にまとめ、22年度学会発表を行う予定である。
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