本研究では、東・東南アジア地域の生産ネットワークの拡大・深化に国際間の移転費用がどのように影響しているのかについて分析した。フラグメンテーション理論では、生産工程の分散立地とネットワークの深化はサービスリンクコストと呼ばれる一種の移転費用が低下することによって可能となる、とする。これを確認するため実証研究を行った結果、定量化の困難さなどから航空運輸に関する移転費用に焦点を絞ったものの、東・東南アジア地域の移転費用が他地域の同種の研究と比較して有意に小さいこと、及び移転費用の大小が国際航空運輸フローに大きな影響を与えていることが明らかとなった。両方の結果を綜合すると、東・東南アジア地域の移転費用が他地域よりもかなり低くなっていることが、当該地域の生産ネットワークの拡大及び相互依存関係の深化に寄与していることが示唆される、といえるだろう。
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