研究概要 |
住所地以外からの入院患者が多い公立病院などでヒアリングを行い、医療資源配分の歪みについて調べた。その結果に基づき、入院医療ニーズと関連付けて公立病院の入院医療サービスを分析した。研究実施計画に沿って研究を進めた。1.文献調査およびヒアリング2.データの収集と入力3.疾病の分布を考慮した入院医療ニーズと関連づけのある計量経済分析 論文「入院医療サービスの垂直的公平性と負担金の財政調整」において、入院医療ニーズに対して公立病院の入院医療サービスが垂直的公平に供給されているかを分析し、入院医療サービスを下支えする負担金の水平的財政調整を検討した。分析対象は近畿地方の市町村立病院であり、入院医療ニーズの指標として標準化死亡比(平成10年〜平成14年,ベイズ推定値)を用いた。近畿地方全体では、入院医療ニーズに対して入院医療費(患者あたり1日)と医業費用に占める負担金の比率(負担金比率)は垂直的に公平であった。入院医療ニーズの高低で区分したブロック別では、兵庫県・奈良県において、入院医療ニーズの高い者に有利な形で負担金が配分されていた。処置・手術にともなう収入が入院診療収入に占める比率(処置・手術比率)と平均在院日数は負の相関がある。入院医療費(患者あたり1日)の自然対数値を被説明変数とする回帰方程式の推定によって、負担金比率と処置・手術比率の相乗効果が入院医療費にプラスであることを見出した。この効果は、負担金比率の上昇による入院医療費引き下げを相殺する。患者の重症度や病院の特性に応じた負担金の繰入れは、公立病院の経営にプラスに寄与すると推察される。
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