本研究は、寡占市揚において、企業が生産物の利用に伴って汚染物質を排出するような生産物を生産しており、そのような汚染物質を排出しないような技術の研究開発を行うという状況を想定する。その際に、政府が厳しい環境規制を課すことによって、企業に研究開発を行う誘因を与えることができるので、政府が企業に研究開発の最適な水準を達成させることができるようにその環境基準の設定を立案することができると考える。このとき、政府がどのようにして環境基準の設定の立案に取り組むかを明らかにしようとする目的で、本研究を行なった。 本研究では、2国の企業が第3国の市場に財を供給し、各国企業が汚染物質を排出するような財の生産を行っているが、同時に排出削減投資を行うような状況を想定した。また、汚染物質の蓄積過程に不確実性が生じるものとした。そのような状況で、各国政府間で行われる排出税ゲームを確率微分ゲームの枠組みで分析し、Markov完全ナッシュ均衡および協調均衡を導出し、比較を行った。比較の結果、汚染ストックに関してはMarkov完全ナッシュ均衡の方が大きく、排出税率、価値関数に関しては協調均衡の方が大きいという結果が得られた。ただし、協調均衡解の場合、協調から逸脱する誘因が生じるため、協調が長期的に有効であるためには、協調に参加することが有利であるような保証が必要である。そこで、各国政府間で合意された最適性原理によって、各国政府が協調行動に合意し、協調均衡における利得を分配する分配制度を示し、さらに、その分配制度によって得られるサブゲーム整合的な協調均衡解を導出した。
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