研究概要 |
本研究課題は、産業クラスターに属している様々な経済主体間の相互作用のメカニズムを解明し、地域発展のための制度設計に繋がる政策提言を行うことを志向している。具体的には、日本、韓国、中国における産業集積(産業クラスター)地域で、情報通信技術を核に、イノベーションに基づく生産・サービス活動を展開している企業を調査対象として、各企業の産学官連携をはじめとする企業ネットワークのあり方を調査し、イノベーションと産業集積の関係を探っている。 平成20年は、19年度に引き続き,調査地域の特定のために聞き取り調査を重点的に実施し、19年度に一部の地域、(日本=北九州市、長野県)で実施したアンケート調査の集計を行った。集計結果から、北九州市におけるICT関連の製造業・サービス業は、ともにグループ企業内の取り引きが顕著であり、また、その空間範囲も国内に留まっていた。一方、長野県におけるICT関連の製造業・サービス業は、グループ企業外の取り引きが顕著であり、また、その空間範囲も(海外を含めて)広範なものとなっていた。北九州市よりも長野県の方が、連携相手の機能、空間的広がりともに多種多様な連携ネットワークを構築できており、連携ネットワークにもとづく集積の経済を享受できているものと考えられる。 今年度は、韓国と中国の調査結果を集計し、さらに、これらのデータに新旧の調査データを加えて、パネルデータ化し、19年度に文献レビューで提示した仮説を検証するために、計量経済分析を実施し、論文にまとめていく。
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