研究概要 |
平成19年度は,近年制定されたロシアの情報公開法に基づき『ロシア国立経済文書館』で公開されるようになった「ソ連閣僚会議内部資料」を調査し,その人口統計の整備に尽力した.すなわち, 1920年代から第二次大戦を挟んで1950年までという公式統計がほぼ皆無である期間について,出生・死亡・乳児死亡そして総人口という生産側面における最も基本的なデータ系列を完成させた.さらに帝政ロシア末期(1800 年代後半)から革命直前までの帝政ロシア内務省統計を整備し,かつそれは地域別(帝国の50県別)に,可能な限りで整備を行った.これらに基づき産みだした成果の1つが雲和広・森永貴子・志田仁完「ロシアの長期人口統計」『経済研究』59(1),2008年, pp. 74-93及びKumo, K.,Morinaga, T.and Shida,Y., Long-Term Population Statistics for Russia:1867-2002, RRC Working Paper Series No.2, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University,December 2007 である.他方現代ロシアにおける地域分析の試論として,ロシア連邦統計局担当官から直接獲得したデータを用いてその人口移動マトリックスの解析を行い,ソ連時代からの歴史的背景を有する資源産業立地が地域経済に与える影響を顕著に看取することが出来た.その成果はKumo,K.,Inter-regional Population Migration in Russia: Using an Origin-to-Destination Matrix,"Post-Communist Economies,19(2), 2007, pp. 131-152 である.
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