研究概要 |
平成19年度の理論的研究については,当初の研究計画の通り国際的技術移転についてのミクロ的な基礎付けを収集し,検討を行った。特に多国籍企業の直接投資行動と途上国企業の模倣に関するモデルや不完備契約理論を用いて,企業直接投資行動やアウトソーシングを説明するモデル等について詳細に分析し応用可能性について分析した。その過程で九州大学大学院にて行われた研究会に参加し,議論を行うことができた。当初の計画より遅れたが海外直接投資による技術移転と知的財産保護政策に関する論文を執筆中であり,6月の日本応用経済学会で発表する予定である。 実証的研究については,年度当初より着手し,九州大学大学院の大住圭介教授,内田秀明助手と共同で,各国の知的財産保護政策が所得水準および経済成長率に対してどのような影響を与えるのかという点についてクロス・カントリー・データを用い実証研究を行った。研究の結果,先進国については知的財産保護の強化が所得水準および経済成長率を高める傾向がある一方で,途上国に関しては,知的財産保護の強化が所得水準を引き下げる傾向があることが確認された。この結果は知的財産保護が所得や成長に与える効果が,その経済の発展段階に依拠することを示しており興味深い。この論文については7月にマレーシアのクアラルンプールで行われたAsialics 4th International Conferenceにて研究報告を行った。また当初の予定通り金沢大学の大学院生をRAとして雇用し,実証研究に関する論文やデータ収集を行った。 さらに平成20年1月には,RIETIと京都大学経済研究所共催の国際シンポジウム「知的財産と東アジア・ルネッサンス」に,3月には京都大学経済研究所主催の国際コンファレンスに参加するなどし,情報収集や研究上の交流を行った。
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