1995年以降、段階的に実施されてきた電力自由化において、2000年に行われた特別高圧需要家への自由化以降の価格変化を分析した。電力自由化により電力価格の低下は実現したが、その要因をヘドニック価格を用いて分析した。ヘドニック価格とは、財・サービスの品質や性能の変化が価格にもたらす影響を考えたものである。この方法は不動産や電化製品の価格を分析する際によく用いられるが、電力価格の分析に用いたところがポイントである。自由化により生産面での効率性は達成されたが、電力の品質を確保、あるいは新規参入者PPSとの差別化のため、電力の品質向上は重要である。また需要家は電力の品質を考えて供給先を選ぶと考えられる。推計モデルは対数線形モデルを用いた。被説明変数である価格には、経済産業省資源エネルギー庁が四半期ごとに行っている電力需要調査アンケートにおける電力会社エリアごとの平均電力単価を使用した。調査期間は2000年度から2006年度までである。説明変数は電力の限界費用に影響を与えることを通じて価格を変化させる特性である。それには1.限界費用に影響を与える質的な特性を表すもの 2.限界費用の変動を表すもの 3.マークアップの操作変数となる競争度を表すものに分けられる。1.の特性については供給信頼度、企業イメージ、環境への貢献度を表す変数を用いる。供給信頼度としては重要なのは停電しないということである。推定結果は、自由化後は競争により有意に価格が低下していること、後半では停電時間が価格に影響していることが分った。
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