研究初年度にあたる平成19年度の研究目的は、我が国の都市・地域における総合的・包括的な「アクセシビリティ指標」を構築するため、 1.EUにおいて多く検討されているアクセシビリティ指標を分析すると同時に 2.我が国で取得可能なデータを整理し、 3.適切かつ妥当な「アクセシビリティ指標」を検討する。 であった。この目標を達成するために本年度前〜中期にはアクセシビリティ指標に関する海外の先行論文(約150本)からアクセシビリティ指標に関する最新の動向を把握した。この中で都市・地域におけるアクセシビリティの確保は非常に重要視されているものの、その計測方法は統一されておらず、一般化されたアクセシビリティ指標が確立されているとは言えないこと(アクセシビリティ指標によって地域の特性を把握するに留まること)、アクセシビリティ指標を構成する要素として重要視されているのは、(1)教育・情報などのソフト面と(2)道路・鉄道整備などのハード面に大別されること、などが明らかとなった。以上の結果に基づき、さらに我が国の経済社会状況を勘案し、今後は我が国における医療施設(医療サービス)へのアクセシビリティを重視した評価指標の構築に焦点を絞ることとした。先行論文でも医療施設へのアクセシビリティを扱ったものは幾つか見られたが、我が国の医療行政は他の国とは大きく異なること、逼迫した財政状況や高齢社会の進展といった社会状況の中で現在積極的に医療制度改革が行われていることなどを考えると、優先的に検討・評価すべきテーマの一つであると考えている(なお、これによって得られた指標は、他の分野のアクセシビリティを計測する上でも非常に有用であると考えている)。現在は、必要データの収集等を行っているところであるが、次年度は我が国に有用なアクセシビリティ指標を作成・公表する予定である。
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