平成19年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 今年度は、企業間信用が中国の経済発展にどのような貢献をなしえているか、および、中国企業間信用発達のメカニズムの探求が平行しておこなわれた。具体的には3度の現地調査を行い、また集計マロデータ・企業マイクロデータによる計量経済学的分析も行った。 第一の研究成果は、集計マクロデータ・企業マイクロデータを用いた計量分析により、企業間信用の資金配分上の効率性が銀行融資のそれに比して明らかに高いこと、言い換えればよりパフォーマンス(収益性・生産性)の良好な企業へ企業間信用を通じる与信がなされていく傾向が確認されたことである。この成果報告は現在ワーキングペーパーとして執筆中である。 第二の研究成果は、主として現地調査より、中国企業間信用が発達し良く機能している理由として、(1)私的に生産された企業情報の外部への流通(パブリック化)や、(2)限定的なものながら法制度の機能や手形制度の機能といった公的制度の支援、等の環境・制度的背景の上に、(3)中国の競争的な市場環境とその中で取り結ばれる流動的な取引関係が、売り手・買い手共にコストをかけてでも企業間信用に関する特定の企業間関係への投資を積極的に行う動機付けを与えており、それが企業間信用取引・与受信(信用確立・信用継続)を活発にさせていることが明らかにされたことである。この成果報告は現在ワーキングペーパーとして執筆中である。
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