平成20年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 今年度は、中国企業間信用が良好に機能することを可能にしているメカニズム及びその発展の理由の探求と、研究計画全体の成果のとりまとめがおこなわれた。具体的には2度の現地調査を行い、また集計マクロデータ・企業マイクロデータによる計量経済学的分析も行った。 第一番目の課題に関しては、現地調査と計量分析の結果により次の諸点が明らかとなった。先進的な沿海部を中心として、企業間信用は、新規企業の市場参入や中小企業に対する資金提供に貢献している(そして銀行融資は既存企業・大企業の存続や規模拡大に貢献している)ことが、初歩的段階ながら計量的に確認された。また、市場競争・法制度整備・手形制度といった信用取引の促進要因仮説の成否が、中国内の先進地域と後進地域における現地調査結果の比較からかなりの程度明らかとなった。 第二番目の課題に関しては、前年度からの成果の一つを学術誌に論文として公表することが出来た。それは、企業間信用の比較対照例としての銀行融資の資金配分効率性を問うものであり、中小企業に対するそれは深刻な問題をはらんでいることを統計的に示した。また、中国企業間信用の進化過程・それが金融側面で果たしている役割・信用取引の促進要因に関するワーキングペーパーが各一本ずつ執筆され、内一本は既に学術誌に投稿中である。その他のワーキングペーパーも投稿準備を進めており、近日投稿される予定である。
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