平成20年度は、(1)半導体産業において韓国企業が学習段階から技術革新段階への移行をどのように成し得たか、(2)現在の技術革新は企業内あるいは国内外のどのような基盤のもとで行われているか、という問題を中心に調査・研究活動を行った。この結果、半導体産業では1990年代以降、相対的に安定的な技術体系のもとで国境を越えた技術知識の交流・共有という動きが活発になったこと、この流れはキャッチアップを完了したばかりの韓国企業にとって独自に技術開発を推進していくための指針として最大限に活用できるものであったこと、このような国境を越えた産業レベルの研究開発体制のなかではより多くの開発資源を動員・投入できる半導体企業に開発上の優位があり韓国企業の資金力が発揮しえたこと、などが明らかになった。さらに、他ならぬ韓国企業が学習段階から技術革新段階への移行を達成しえた内的動因として、開発部門から量産部門にいたるまでの技術情報の共有の仕組みが構築されている点に注目した。1980年代まで韓国企業の生産システムの特徴であり独自の技術開発に移行し得ない要因と見なされていた技術部門と生産現場との相互関係の欠如は、少なくとも半導体産業においては克服されていることが明らかになった。これらの成果は最終年度の研究成果(単著)として公表の予定である。
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