本研究では、韓国半導体企業が(先進国企業に匹敵するレベルでの)技術革新の担い手に変貌した現象について、学習から技術革新への移行がどのようにして可能になったか、現在の技術革新は企業内あるいは国内外のどのような基盤のもとで行われているか、技術革新がどのように具体的な経済成果に結びついたか、という点を明らかにしようとした。最終年度にあたる平成21年度は、これまでの研究成果の全体を取りまとめて関連の学会で発表するとともに、成果を広く発信すべく著作の執筆作業に専念した。 本年度は、学習から技術革新への移行問題と関わって、とくに技術開発を支える資金的・組織的要素を検討した。ここでは、韓国半導体企業を代表するサムスン電子の場合、オーナーによるトップダウン式の意思決定構造のもとで外部資金に依拠しながら経営的にリスクの高い開発・設備投資を強行するという成長のあり方から、1990年代末以降、巨大な生産能力と自ら開発した先端技術を梃子にコスト競争力を発揮し、それにより獲得した内部資金に基づいて技術開発と拡大成長を図るという自律的な発展に移行したことを明らかにした。 以上の成果とこれまでの研究を通じて得られた成果をまとめて、拙著『韓国の工業化と半導体産業-世界市場におけるサムスン電子の発展-』を刊行した。
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