研究概要 |
途上国が直面する問題の相互作用の研究における第1段階としては,lyigun(1999)の教育の外部性を取り入れたモデルに頭脳流出が教育投資に及ぼす影響を考慮しすることにより,教育を受けた人口割合が時間を通じてどのように変動していくか,移民政策によりどのような影響を受けうるのかを分析した。このモデルにおいて教育の外部性は能力の分布に影響する。教育を受けた個人の子供は能力分布の上限が教育を受けていない個人と比較し,高く想定されている.次年度以降へのべースとなるモデルの構築および分析が目的であるため,能力には不確実性は想定していない。個人は2期間生き,第1期において教育投資を行うかどうかを決定し,教育を受けた個人は第2期においてより賃金の高い地域への移住を希望することができる.移住できるかどうかは受け入れ国側が設定する移住確率に依存する。移民の受け入れルールとして,教育を受けた人口の割合が高い国に対し高い移住確率を設定し,教育を受けた人口の割合が低い国に対し低い移住確率を設定する傾向がある。しかしこのモデルにより教育を受けた人口の割合に依存する移民確率の設定はそれ自体が教育を受けた人口の割合を決定してしまう可能性があることを示した。直観的には教育の割合が少ない国から教育を受けた個人を吸収してしまうことは移出国側にとっても望ましいことではない印象を受けるが,経済環境によってはこのような配慮そのものが移出国側の教育の期待収益を低下させてしまい,結果より低い教育投資をもたらしてしまうことが明らかとなった。このことから移住者の教育や技術水準に基準を置くことは移出国,受入国双方にとって問題とはならないが,国別地域別の移民数の割り当ては移出国に直観的な印象とは違い悪影響をもたらしうることが予想される。
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