本年度は、地域経済の発展を阻害する要因のひとつとして、地方公務員の給与水準を挙げ、生産性の高い人材が公務に偏っているため、民間部門にそうした人材が回らず、地域の経済成長を抑制している可能性を実証的に検証した。 これまでこうした地方公務員の給与に関する研究は、統計的な数値に基づく研究は数少なく、情緒的な議論が中心であったが、本研究は公表きれている統計データ(「地方公務員給与の実態」、「賃金センサス」等)に基づく分析を行った点は特筆すべきところである。この統計処理により、国家公務員給与に準拠した地方公務員給与は、地方部では地元の民間企業の給与水準と乖離し、地域経済の成長を阻害している可能性が高いことを示した。 国家公務員給与は民間企業の水準を基準に決められているが、民間企業が都市部に偏っていることから、平均化すると都市部の水準に偏る傾向がある。その国家公務員給与を基準とする地方公務員給与は必然的に都市部の民間部門の給与水準に引っ張られることになる。結果として、民間部門の給与水準が低い地方部では、公務員給与が高く、地元民間部門との乖離が生じていることが明らかとなった。
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