本研究は、通常学卒後40年以上に及ぶ就業可能期間において、様々な移動を繰り返しながら労働者がキャリアを積み重ねていく過程を、5つのキャリアステージ(学校・企業・NPO・創業・インターバル)を拠点に実証分析することを目的としている。 本年度は、キャリアステージの中でも特に「学校」に力点を置き、2種類の調査票調査を実施した。 1つは、「中国における日本語専攻大学生の就職活動に関する調査」である。この調査は、日本の大学生と競合する可能性が高まりつつある中国(山東省)の、かつ日本語が堪能な大学生を対象とし、その就職活動の実態を把握しながら、どのような就業意識とキャリア実現力が形成されているかを明らかにすることを目的としている。得られた286名のデータから、日本とは大きな隔たりのある新規大卒者の就職市場や就職支援体制のあり方が、中国の大学生の就業意識に少なからぬ影響を与えており、人材活用のグローバル化を目指す上で示唆に富む結果が示された。 もう1つは、「キャリア教育の現状に関する調査」である。大学進学率が50%を超える昨今、早期離職やフリーター、ニートなどの若年雇用問題が最も表出しやすいのが、職業高校などで訓練されることもなく就職せざるを得ない普通科高校の出身者であるという問題意識から、全国の普通科(コース)高校3984校全てを対象とし、キャリア教育の実態と課題の把握を目的として上記調査を実施した。2010年3月末時点で約850校から回答を得ており、速やかな集計および分析を次年度の課題としている。
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