本研究は、通常学卒後40年以上に及ぶ就業可能期間において、様々な移動を繰り返しながら労働者がキャリアを積み重ねていく過程を、5つのキャリアステージ(学校・企業・NPO・創業・インターバル)を拠点に実証分析することを目的としている。 本年度は、まず昨年度実施した調査票調査「キャリア教育の現状に関する調査」の集計および分析を手掛けた。最終的に分析対象となった880校のデータから、キャリア教育の実施状況を規定する要因としては、進学率が低い高校ほど、切実な「需要」に応じてキャリア教育を実施しており、「実施可能性」の高い環境に恵まれている小規模校ほど、実際にキャリア教育を実施できているということが確認された。加えて、複合的なキャリア教育の有効性については、「実学」であるインターンシップと「座学」である知識教育の交互作用効果が、複数の「効果」に関する項目で確認された。キャリア教育における様々な方向からのアプローチは、教育現場において積極的に取り組むに値する試みであるといえる。 以上の結果を中心に、2010年10月に社会政策学会で発表を行い、2011年5月にも同学会でさらなる発表を予定している。また、調査報告論文及び学会発表を取りまとめた論文を作成し、それぞれ投稿中である。これらの経過報告を含めて、調査協力校への冊子体でのフィードバックを郵送で行った。なお、得られた知見は、次年度以降の研究計画「「キャリア教育」の実効性-正課教育・課外活動・就職支援との分離と融合-」の策定に反映させている。
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