エージェントベースシミュレーションでは、多数のエージェントにそれぞれ異なる初期値を付与する必要があるが、シミュレーションに必要となる初期値を、観測値(ミクロデータ)から効率よく生成する手法はこれまで無かった。また、エージェントベースシミュレーションのシミュレーション結果は複雑で確率分布も不明であり、シミュレーション結果の確率的評価はこれまで難しかった。そこで平成19年度は前述の点を解決した。エージェントベースシミュレーションにおける初期値の設定、シミュレーション結果の推定、仮説検定において、数値確率分布法が有効であることを示した。エージェントベースシミュレーションでは、多数のミクロレベル・エージェントの初期パラメータに、それぞれ現実に近い値を揃える必要があるが、数値確率分布法によるデータ指向乱数生成法を採用することで解決できることを明らかにした。また、エージェントベースシミュレーション結果の評価では、採用する政策が有効であるかどうか仮設検定を最終的に行う必要があるが、数値確率分布法による推定、検定手法を採用することで、政策の有効性を評価できることを明らかにした。 次年度も引き続き研究を継続し、考案した基本モデルに、個々の企業、家計をベースとした現実に近いエージェントのパラメータと行動ルールを実装することで、政策シミュレーションに用いることのできる基礎モデルの構築を完成させ、研究成果の報告を行う。
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