研究概要 |
今年度の研究は, 政治的な均衡概念の1つであるデュベルジェの均衡を考察したもの, 地方自治体間で人が移動することで均衡が導かれるというティボー仮説を実証的に考察したもの, 地方自治体へのヒアリングや視察によって学んだ「自治体の意志決定」にまつわるもの, 地方自治体のデータを整理する過程で副次的に析出された事実をまとめたの, という4つから構成されている. 本研究が主題とする選挙などの政治プロセスを通じた「監視メカニズム」は, 住民の意思と政治的意志決定とをつなぐ「ブラックボックス」でもある. このブラックボックスの働きを検証するためには, 現実の自治体の意志決定と, 住民の意思(ニーズ)とを比較考量しつつ, 「監視機能」の定量的な実態を検討することが必要になる. 今年度の研究において, 政治的な均衡と住民移動の均衡へ注目したのは, 経済学の理論は均衡値と均衡値を比するのに適しているが, 収束過程を明示的に取り扱うことはあまり得意ではないため実態を均衡となしうるのかは, 非常に重要な論点となりうるのである. したがって定量的な分析に用いることになる観察可能な「実測値〕が, 均衡へと向かう「過程」であるのか, それともある種の「均衡」であるのか, さらには均衡への収束過程がどのようになっているのかについて理解しておくことが必要であると感じたためである. それぞれの研究成果は, わが国において十分な蓄積が無く, 自らで確かめていく必要があった. また, 市町村合併など自治体の意志決定についてデータ整備や情報収集を行う中から, 副次的な研究成果を得ることもできた. これら本年度の研究は, 個々に新たな知見を僅かでも含んでいるものと思われ, 一定の学術的な貢献が期待されるし, 本研究の最終ゴールに向けた橋頭堡ともなりうるものと期待される.
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