本件に関連する研究として、平成20年度には(1)サービス支出行動の分析、(2)量的緩和政策と時間軸政策についての検証、(3)為替レートを考慮した政策反応関数の推定、の3点について研究を進めた。 (1)は、総消費支出の5割以上を占めているサービス支出に関する検証を行っている。これまではサービス支出は景気動向に左右されないものとして、異時点間代替弾力性に着目した研究が行われていなかったが、本研究では、サービス支出のうち奢侈品に相当する選択的サービスの存在を考え、この異時点間代替弾力性を推定した。その結果、90年代以降でのみ、非耐久消費財より高いサービス支出の代替弾力生が計測された。これは、ニューケインジアン型IS曲線を推計するために非常に重要である。 (2)は、2001年から5年間実施された、量的緩和政策と時間軸政策の効果についての研究のサーベイ、及び実証分析である。実証研究では、長短金利スプレッドと鉱工業生産指数による経済成長率を用い、タームスプレッド縮小が持つ経済成長への正の効果の有無について検証した。これは時間軸政策で期待される効果の1つであり、通常とは逆の関係である。推定の結果、1年半を超える長期間先の経済成長に対しては2001年を境に通常の負の関係が消滅した一方でタームスプレッドの縮小が経済成長に正の関係を与えることは示されず、時間軸政策は、十分に経済成長を促進させる影響を持ち得なかったことが示された。 (3)では、説明変数に為替レート予測値・インフレ率予測・GDPギャップを考慮した政策反応関数の推定を行った。この研究は共著者を第1執筆者とした共同研究であり、代表者が担当した個所は、推定およびGDPギャップの推計である。分析の結果、円安期待とインフレ抑制の関係が示唆された。
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