我が国株式市揚における取引で実施されている値幅制限が価格形成に与える影響について実証分析するため、まず、東京証券取引所第1部の各銘柄の超高頻度データから、5分および10分間隔の収益率データを作成した。このデータから、容易かつ高速にデータが取り出されるように高頻度観測データ・ベースの構築を行った。 さらに、高頻度観測データを記述統計的に分析した結果、日中季節性が存在することが明らかになった。このことを踏まえ、日中季節性を考慮に入れたボラティリティ変動モデルを構築し、個別株価収益率の変動特性が、値幅制限の上限・下限の近辺で変化するかどうか検証を行った。 実証分析の結果、一部の株式については、値幅制限の上限・下限の近辺で株価の変動特性に構造変化が見受けられ、いわゆる値幅制限による株価の磁石効果の存在が示唆される結果となった。このことは、値幅制限ルールにより株式の価格形成がゆがめられている可能性を意味する。 しかしながら、診断テストの結果、株式によってはその株価変動特性が構築したボラティリティ変動モデルで十分に説明できないものも見受けられ、株価の磁石効果の存在の有無を検証するためには、企業規模や取引高などの要因も加味した、より精密な株価変動モデルの構築が必要であることが明らかになった。平成20年度はこの問題に取り組み、我が国株式市揚における株価の磁石効果についてのより一般的な実証結果を導き出す予定である。
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