研究概要 |
本年度の目標は,学会発表および国際ジャーナルへの掲載にある。本年度は査読付き論文を3本(内国際査読付きジャーナル1本),ディスカッションペーパーを1本,報告書を3本,図書1章分を掲載することができた。学会発表に関しては,2回発表することができた。 査読付きジャーナルに掲載された論文について説明を行う。Journal of Banking and Financeへ掲載された論文"Do the equity holding and soundness of bank underwriters affect issue costs of SEOs?"は,親銀行の株式保有と健全性が銀行系証券会社の利益相反・保証行動にどのような影響を及ぼすか検証した.親銀行の健全性が低い状況のもとでは,その系列証券会社は質の低い企業に市場から株式を通じて資金調達させ銀行の借入金の返済に充てさせている可能性があることを明らかにした.この研究は,ある状況下においては銀証分離が望ましいことをあきらかにしている. 『管理会計学』に掲載された論文「会計利益と課税所得の情報内容の変化」は,会計利益と課税所得のいずれが株式市場において有意義な情報として株価に反映されるか検証している.会計利益のみならず,課税所得も増分情報を含んでいることが分かった.こうした結果は,所得情報公示の廃止はあきらかに株式市場に対し有意義な情報を減らすことを意味している. 学会発表に関しては,日本ファイナンス学会で発表した「経営者予想と公募増資」では,経営者予想を通じて市場に対し,公募増資時の価格をミスリードさせている可能性があることを検証している.来年度,発表内容をブラッシュアップすることで論文を査読付きジャーナルへ投稿する予定である。
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