2007年度は、標題である安定化政策における地方政府の公共投資についての研究と、関連する研究として日本を含めたOECD諸国を対象とした財政再建の実証分析を行った。 まず、地方政府の公共投資を安定化政策の手段として用いることが適切であるのか否かについて、景気対策の制御可能性の観点からの検証と、政策効果の計測という二つの側面から分析を行った。最初に、制御可能性については、地方財政データを整理し、「予期された」政策発動の観点からは、地方政府が中央の要請に応じて公共投資を追加したとは言えないことを示した。次に、政策効果の面では、地方政府の公共投資の効果ラグが長く、また政策の波及性・持続性については、地方政府は効果が観察されないとの結果を得た。同研究は、「地方政府の公共投資と景気対策」としてまとめられ、合評会での審査の後、『フィナンシャル・レビュー』に掲載された。また、同研究の拡張版を英文で、「Public Investment and Business Cycles: The Case of Japan」としてまとめた。同論文は、学会報告などを経て、現在投稿中である。 次に、財政再建の実証分析では、財政再建の「成果」と各国の予算制度上の要因、ないしは政治的要因との関連を探った。同論文は、「Political and Institutional Determinants of Fiscal Adjustments: Evidence from OECD Countries」としてまとめ、査読つきの国際会議(International Institute of Public Finance)にて報告した後、改訂版を学術雑誌に投稿した。また、日本語版を公共選択学会第84回研究会にて研究報告し、その抄録が同学会の学会誌『公共選択の研究』に掲載されることが決定している。
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