平成19年度は、アジア諸国の債券市場の国際的な連関とADB発行債の債券市場整備への影響について分析したが、平成20年度は、引き続き、社債市場に先行して発展しているアジア各国の国債市場の現状に関して、より詳細な分析を進めた。まず、債券市場の整備は金融政策の公開市場操作を行う上でも重要であることから、国債市場と金融政策との関連に注目し、金融政策の変更と国債の利回りやボラティリティとの関係を明らかにする研究を開始した。それらの関係が、アジア各国においても、米国などの先進諸国と同じように観察できるかを分析することで、債券市場の現状について議論する。これは、現在も継続して研究を進めている。さらに、それと関連する研究として、アジア各国がどのような手段を用いて金融政策運営を行っているかを考察した。この研究はすでに論文として公表している。タイとフィリピンの中央銀行の金融政策運営に関して、銀行の総準備や非借入準備を変動させる量的政策手段が用い照れている可能性を否定できず、さらに、インフレターゲッティングの導入後も金融政策運営手段に大きな変化があったとの結果は得られなかった。この結果と現在進めている金融政策と債券の関係についての研究結果とを合わせて考察することで、アジア諸国における債券市場の整備の現状や課題についての議論が展開できると考えられる。 なお、アジア地域の社債市場についての分析は、本年度の当初の計画に従い、データの問題などから国債市場の分析の後に行うこととした。これについても引き続き作業を進めていく予定である。また、債券市場と関連する他の金融市場、例えば、貸出やインターバンク、株式といったそれぞれの市場についての問題、および、アジア地域の債券市場に影響を及ぼす可能性のある資本移動に関する問題も考察し、それらの研究成果も公表した。
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