昨年提出した交付申請書中の「本年度の研究実施計画」に記した通り、基礎的史資料の収集から研究を始めた。まず『農商務統計表』『新潟県統計書』等、一部は本学未所蔵の基本統計を収集した。ついで小出銀行に関する『考課状』(営業報告書)等の基本資料や、『貸附金元帳』『総勘定元帳』『荷為替手形元帳』『日鑑』等の特定分野に関わる資料について、ホクギン経済研究所に数回赴いて閲覧・複写を行い、それらを整理・分析した。後者の過程で、研究計画調書中の「研究目的」4(2)に記した小出銀行の経営史的研究が良好に進捗すると見込まれたため、本年度はその成果のとりまとめを急ぐこととなった。そして、2007年10月20日に愛媛大学で開催された経営史学会第43回全国大会自由論題報告において、「銀行類似会社=地方銀行における健全経営と地域支援の相克〜小出金融社の事例〜」という題目で発表した。報告時に受けた幾つかのコメントを踏まえて報告内容を修正し、現在、『経営史学』に投稿すべく準備中である。 上記の報告の内容は、1882年における小出金融社の設立から銀行条例施行により改称した小出銀行の明治末までの経営を、地域社会との関係と製糸金融を軸に包括的に論じたものである。これを成稿とすることで、新潟県のような産業革命の周辺地域における着実な資本主義化を示そうとする本研究の、核の部分ができあがる。更にそれは、小出銀行関連の諸一次史料を用いた初の実証研究という意義も持つであろう なお、同報告をまとめる過程で小出銀行と北魚沼郡蚕糸業との関係・小出製糸業の分析・新潟県内絹織物業地との関係等について、実証的に深めるべき点が残っていることが判明した。またこうした研究の比較対象となるべき石油産業と新潟県との関係についても、当初設定した平成22年度よりも前倒しして研究を開始する必要性を感じており、次年度(平成20年度)はそれらの研究から開始する予定である。
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