昨年提出した交付申請書中の「本の研究実施計画」に基本的にもとついて、本年度の研究は遂行された。第一に、小出銀行の経営史的研究について、前年度10月に経営史学会全国大会で「銀行類似会社=地方銀行における健全経営と地域支援の相克」という題目で報告したが、そこで受けたコメント等を踏まえ加筆修正を施し、9月に論文「国用糸製糸業向け製糸金融を行う地方銀行のビジネス・モデル〜新潟県北魚沼郡小出銀行の事例〜」を学術雑誌『経営史学』に投稿した。同論文は匿名外部査読者の査読と同誌編集委員会の審議を経て3月に返送されたが、査読結果は「修正の上、掲載可」というものであった。従って、同論文の更なる加筆修正が、次年度の第一の課題となる。同論文は、小出銀行の実証研究というに止まらず、国用糸製糸業、製糸金融、更には明治期地方銀行のビジネス・モールという、日本経済史・経営史研究総体に関わる事例研究としての意義を持ちうることが期待される。 第二に、蚕糸業と地域経済の関係の比較対象となるべき石油産業と地域経済の関係に関する、新潟県の個人石油精製業者の活動の研究について、当初の予定通り、資料所蔵元の中野重孝氏宅に複数回赴いて資料の閲覧・収集・分析を行った。同家資料は膨大なため、本年度は一部の資料の整理・分析に止まった。次年度にも同様の作業を継続した上で、分析結果を踏まえて本学紀要『経済学研究』に投稿する予定である。 第三に、本研究全体に関わる現在の考え方を整理し、その内容を、「日本の産業革命」という題目で11月に札幌大学経済学部で講演した。そして講演内容を整理・修正した上で、札幌大学経済学部附属地域経済研究所『地域と経済』No.6に投稿した。同論文は受理され、3月に刊行された。
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