昨年提出された交付申請書中の「本年度の研究実施計画」に基本的に基づき本年度の研究は遂行された。 第一に、明治期小出銀行の経営史的研究に関する論文「国用糸金融と地方銀行-小出銀行のビジネス・モデル-」が、『経営史学』第45巻第2号(2010年9月)に掲載された。なお、小出銀行と中越地方の他の地方銀行との資金貸借関係の研究については、インターバンク市場に関する研究史整理や、小出銀行の大正期の事業展開の概要把握に労力を費やし、論文等直接の成果を挙げるには至らなかった。 第二に、大正期における日本石油産業の展開について、国内最大の石油会社で新潟県を本拠とした日本石油の第一次大戦後の活動を、当該期の国際・国内両石油市場・石油政策の展開との関連の中に位置づけ、「第一次世界大戦後における日本石油産業の転換」という題目で、政治経済学・経済史学会2010年度秋季学術大会(於:首都大学東京)で報告した。そこで受けた批判とそれに基づく資料の再収集・分析を踏まえ、本年度中に同学会誌『歴史と経済』に投稿予定である。 第三に、新潟県の石油産業の展開と地域経済との関連について、もう一つの斯業の中心地秋田県と比較した論文'The effects of the petroleum industry development on the local economies'を執筆し、欧文紀要"Economic Journal of Hokkaido University" Vol.39(October 2010)に投稿・掲載された。 以上のように、本研究では蚕糸業・金融業・石油産業と地域経済との関係を、新潟県という特定地域に即しつつも多面的に検討した。それらをもとに総括を行うことも計画したが、多様な事例研究を行うことこそ本研究の本来の目的であると考えてそれを優先させ、本年度も上記の研究成果を挙げることができた。
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